少数のお医者さんも、また患者さんの多くも聴診器で診断がつくとお考えのようですが実際はそうではありません。当医院に受診される気管支喘息患者さんの約9割が問診で診断のきっかけがつきますが、逆に聴診器だけで診断がつくのは2割から3割程度です。しかもその多くの症例は患者さんが待合で待って居られる内にその患者さんの息づかいや喋る声や咳で喘息と診断がついていることがほとんどです。
私は長年の治療経験から、咳を一回聞けば喘息を疑うに十分な所見を得ることが出来ます。当医院では患者さんの咳に注意しています。ですから、すでに待合から診断が始まっていて患者さんが退出されるまで診断が続いているともいえます。いつも習慣的に咳が出ている患者さんに咳き込みますかと聞いても、「咳は出ません」と答えられる事もよくあります。問診の仕方も工夫がいります。患者さんにとってはいつもよくあることは取り立てて意識にないからです。慢性的な疾患は常にそうです。
また、喘息の咳は日内変動があるのが特徴です。喘息の咳は夜間を中心に出ることが多く、「布団に入って寝ようとしたら咳き込み出す。」とか「朝方に咳き込みがよく出る。」とか「風邪を引くと咳が長引きます。」などの訴えは十分に喘息を疑う所見です。日中の受診時間帯は日内変動で咳が出ていない時間帯なのです。聴診やエアロスパイロメーターによる検査は問診で得た疑い所見の裏付けです。時に診断的治療が必要なことも良くあります。ひどい喘息発作を起こす患者さんでも時期によってさ声だけや痰のからみだけで初診で見えられることも良くあります。こうした患者さんは過去の喘息発作のストーリーもなく受診されます。
喘息患者さんに対する当医院の治療法は患者さんごとにオーダーメイドだと言えます。それほど、出方に個人差がありうるので患者さんの訴えをよく聞くようにしています。「さ声や痰がからんで切れない、空咳が出る、長く喋れない、声が小さくなったと人から言われる。」などは耳鼻咽喉科の外来でよく聞く訴えですが、一般的な耳鼻咽喉科医は声帯を見て、甲状腺を診て所見がなければ、咽喉等異常感症や声帯溝症や声帯のやせ等と診断を付けてしまうと思います。実はこうした患者さんの多くが喘息の一症状として訴えが出ているのです。
「喘息がありますか、」と聞いても「ありません」と答えるでしょうが、前述した訴えを頭において喘息を疑いその診断の入り口とすべきです。こうした訴えの患者さんが内科を受診されても、内科ではまず声帯に異常があるのではとなり、それ以上の診断は耳鼻咽喉科に紹介してからでないと診断が進まないのが現状です。これからは咽喉頭異常感症と診断病名をつけることは「分かりません」と言ってさじを投げ、疾患病名のゴミ箱にいれて自らと患者さんを雲に巻いていることに等しいことでは無いかと自問自答してもらいたいのです。耳鼻咽喉科医で喘息に対する診断力があるほど咽喉頭異常感症の診断症例は減少するはずだと訴えているのです。
喘息症状は感冒、インフルエンザ、睡眠不足(6時間をきる睡眠)やストレス、喫煙(間接喫煙を含む)、線香の煙、排気ガスが悪化要因です。また低気圧の接近、寒冷前線や雷などの天候も悪化要因になります。引越しもホコリが動くので悪化要因になります。周囲に交通量の多い住環境も悪化要因です。道路に面してる住居地域、また丘陵地の地域では排気ガスが溜まりやすい谷側も転居の際には注意が要ります。このことは山間部のハイウエーを走ると良く分かります。たとえば霧は風通しの悪い谷間に濃く溜まり風通しの良い稜線部は薄いものです。排気ガスはあまり目に見えませんが同じことが言えると思います。
当医院の喘息治療はガイドラインに沿ったものですが、それに付け加えて特徴があります。当医院では希望者にハウスダストによる減感作療法やヒスタグロビン療法を行い、すでにコントロールに入った患者さんのステロイド吸入量や経口薬の減量、薬剤費負担の減少を図っています。その結果、注射療法だけで喘息発作が落ち着いている患者さんや、以前と比較してより少ない投薬量で喘息発作が落ち着いている患者さんが多数居られます。またハウスダストによる減感作療法は妊娠中も可能な治療法です。特に妊娠中はステロイド吸入やテオドール投薬やオノン投薬は出来れば避けたい薬なので、当医院では減感作療法を積極的に妊娠予定者に勧めています。周産期末期に夜間咳き込んで、座っていないと寝られないとか、咳き込みによる腹圧上昇で予定日が早まる事態が避けられます。すでに5人の妊婦さんが出産を終えられています。注射治療経過が5年を経過すれば、治癒の可能性を考え減感作療法の終了を試みています。これによって約数名がその後の再発を見ていません。減感作療法を症状消失で自己終了された患者さんを含めると恐らく20名以上に上ります。 |