約20年前に耳鼻咽喉科学会が中心になって始まったのが気管食道科学会です。その後、内科や外科で気管や食道を扱う科の先生方が参加され、現在多数の先生方の参加によってさらに専門的な学会になりつつあります。今後どういう性格の学会になって行くのか、耳鼻咽喉科医は自らの専門と経験を生かして気管食道科学会に今後どのように影響を与えることが出来るのかと考えなければなりません。この目標に向かって日々の診療から自らを変革していかなければなりません。この課題はまたこの学会の専門医制度が発足すると決まった時から私の中での課題でも有りました。開業までに夜間救急外科で喘息発作の患者さんを多く診てきたことも助けになりました。開業後18年間、私は喘息の診断と治療経験を積み重ねこの課題を克服してきました。私の経験から、従来耳鼻咽喉科医が咽喉頭異常感症と診断してきた症例に気管支喘息の患者さんが多く(7割近くも)いると断言できます。では、呼吸器科が診断治療すべきなのかと問われますと、答えは否です。私自身が香川医科大学病院の耳鼻咽喉科外来で診察していて、内科から多数の患者さん(主訴にさ声、咽頭異物感、痰が切れない、から咳が出る、喋ろうとすると咳が出て喋れない等の患者さん)を何度も「貴科的に御高診下さい」と紹介を受けてきた経験があるからです。両科の境界領域の患者さんといえます。聴診器にたよりすぎて、治療経過も聴かず、エアロスパイロメーター(呼吸機能検査)も行わず、喘鳴がなければ(喘息治療薬が投薬されていて(コントロールされて)症状が消えているにもかかわらず)喘息ではありませんと言い切るのは誤りです。例えば転居等で患者さんが初診で見えられた場合は前医の投薬を聞き、しばらくその投薬に従って経過をみて安定しているようなら減量を図るのが正しい判断と思われるのです。喘息は日内変動(夜間発作が出やすく、日中は咳はまし)があり、日中の聴診や検査だけでは初診だけでは十分病態が把握し切れない事が有ります。季節変動もあります。これらを加味して今後の投薬量を加減するのが治療経験です。
気管食道科学会専門医という名称から、一般の患者さんは気管と食道の疾患が見てもらえると考えると思います。吸気によって鼻腔から咽頭、喉頭、気管、気管支,細気管支、肺胞へと空気が入ってきますが、この経路を一つと見る副鼻腔気管支症候群という疾患概念が提唱されました。粘膜の構造も類似しているのです。また気管支喘息患者さんの約2割が副鼻腔炎を持っているといわれます。鼻の奥からたれ込んだ鼻汁に含まれる炎症物質や細菌が気管支炎を起こすと理解されます。当医院では、声帯に異常がなければ、さ声や喉に痰が張り付いた感じや空咳が止まらない等の訴えは、エアロスパイロメーターを施行し、総合的に喘息と判断し治療を開始する症例が多くあります。これらの患者さんの多くは喘息診断のガイドラインでもステップ1の(軽症間歇型)か2の(軽症持続型)のことがあります。当医院ではより幅広い目で上気道、下気道を含めてエアロスパイロメーターを参考にして総合的に判断しているので、利状部の局所所見にのみとらわれた喉頭アレルギーと診断病名を付けることは少ないのです。海上に浮いた氷山の水上部がステップVとWとすれば多くの海中部分はステップTかUだといえます。喘息を多く経験すれば海上部分の診断より海中部分の診断に総合的判断と経験が要るということが分かります。
食道疾患については、消化管フイバーや消化管造影に頼ることが多く、当医院では診察の結果登録医をしている済生会千里病院に検査依頼を出すことが良く有ります。 |